デイサービスの個別機能訓練加算ⅠとⅡの違い|初心者向け解説

「個別機能訓練加算のⅠとⅡって、何が違うの?」——デイサービス(通所介護)の請求業務に携わると、必ず一度はぶつかる疑問ではないでしょうか。名前が似ているうえに算定要件も複雑で、初心者にとっては混乱しやすいポイントです。この記事では、個別機能訓練加算ⅠとⅡの違いを表でわかりやすく比較し、算定に必要な書類のチェックリスト、現場でよくあるミスとその対策まで、初心者でも迷わず理解できるように解説します。

個別機能訓練加算とは?|デイサービスの基礎知識

個別機能訓練加算の目的

個別機能訓練加算とは、デイサービス(通所介護)で利用者一人ひとりに合わせた機能訓練(リハビリ的な運動や生活動作の練習)を計画的に行った場合に算定できる加算です。「加算(かさん)」とは、基本報酬に上乗せして受け取れる介護報酬のことです。

ポイントは、ただ体を動かすだけでは算定できないという点です。「自宅で安全に入浴できるようになる」「歩いて買い物に行けるようになる」といった、利用者の生活上の目標に沿った訓練を行うことが求められます。

加算ⅠとⅡの全体像

個別機能訓練加算には「加算Ⅰ」と「加算Ⅱ」の2種類があります。初心者がまず押さえておきたいのは、この2つはどちらか一方を選ぶものではないという点です。要件を満たせば、両方を同時に算定することもできます。

  • 加算Ⅰ:機能訓練そのものを評価する、土台となる加算。
  • 加算Ⅱ:加算Ⅰを算定していることを前提に、訓練の質を高める取り組みを評価する加算。

つまり、加算Ⅱは加算Ⅰの「上乗せ」の位置づけです。加算Ⅰを算定していなければ、加算Ⅱだけを算定することはできません

個別機能訓練加算ⅠとⅡの違いを表で比較

両者の違いを表にまとめると、次のようになります。

比較項目 個別機能訓練加算Ⅰ 個別機能訓練加算Ⅱ
算定の単位 1日ごと(日単位) 1か月ごと(月単位)
評価の対象 個別機能訓練の実施そのもの LIFEを活用した訓練の質の向上
算定の前提 単独で算定できる 加算Ⅰの算定が必須
機能訓練指導員 配置が必要(区分により手厚さが異なる) 加算Ⅰの要件に準じる
LIFEへのデータ提出 不要 必須
個別機能訓練計画書 作成・実施・見直しが必要 加算Ⅰの計画に基づく

※単位数(報酬額)は介護報酬改定のたびに見直されます。具体的な単位数は、必ず最新の「介護給付費単位数表」で確認してください。

加算Ⅰのポイント

加算Ⅰは、個別機能訓練そのものを評価する加算で、1日ごとに算定します。算定には、機能訓練指導員(理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・看護師など、定められた資格を持つ職員)の配置が必要です。加算Ⅰにはさらに細かい区分があり、機能訓練指導員の配置の手厚さによって単位数が変わります。

そのうえで、利用者ごとに「個別機能訓練計画書」を作成し、計画に沿って訓練を実施、定期的に効果を確認して計画を見直す——という流れ(PDCAサイクル)を回すことが求められます。

この計画書は、利用者の心身の状態や生活環境、本人・家族の希望をふまえて作成します。機能訓練指導員だけでなく、看護職員や介護職員など多職種が連携して関わることも大切なポイントです。

加算Ⅱのポイント(LIFEとの関係)

加算Ⅱの最大の特徴は、LIFE(ライフ)への対応が必須である点です。LIFEとは「科学的介護情報システム」の略称で、利用者の状態や訓練内容などのデータを国に提出し、その分析結果(フィードバック)を受け取る仕組みです。

加算Ⅱでは、このフィードバックを活用して機能訓練の内容を改善することが求められます。算定は月単位で、加算Ⅰを算定していることが前提条件です。注意したいのは、「データを提出するだけ」では不十分という点です。受け取ったフィードバックを訓練の見直しに生かしているかまでが問われます。

加算ⅠとⅡは併算定できる

前述のとおり、加算Ⅰと加算Ⅱは「併算定(へいさんてい)」、つまり同じ月に両方をあわせて算定することができます。加算Ⅰで機能訓練の体制と計画を整え、さらに加算ⅡでLIFEを活用した質の向上に取り組めば、その両方の取り組みが介護報酬として評価される仕組みです。

ただし、繰り返しになりますが加算Ⅱは加算Ⅰが前提です。「加算Ⅰの要件は満たしていないものの、LIFEにはデータを提出しているので加算Ⅱだけ算定する」ということはできません。まずは加算Ⅰの要件を確実に満たすことが、加算Ⅱ算定への第一歩になります。

算定に必要な書類チェックリスト

個別機能訓練加算を算定するうえで、現場でそろえておくべき主な書類は次のとおりです。いずれも実地指導(行政によるチェック)で確認される重要な書類です。

  • 個別機能訓練計画書:利用者ごとの目標と訓練内容を記したもの。
  • 機能訓練指導員の資格証の写し:配置している職員が要件を満たすことの証明。
  • 勤務形態一覧表(シフト表):機能訓練指導員の配置状況がわかるもの。
  • 個別機能訓練の実施記録:いつ、誰に、どんな訓練を行ったかの記録。
  • 計画の見直し・評価の記録:定期的に効果を確認し、計画を見直したことの記録。
  • LIFEへのデータ提出記録:加算Ⅱを算定する場合に必要。提出日や提出内容の控え。
  • 利用者・家族への説明と同意の記録:計画書の内容を説明し、同意を得たことの記録。

これらは「作って終わり」ではありません。訓練の実態と記録の内容が一致していることが何より重要です。例えば、計画書には「週2回の歩行訓練」と書かれているのに、実施記録が週1回分しか残っていない——といった食い違いがあると、実地指導で指摘の対象になります。日々の記録をこまめに残す習慣をつけましょう。

現場でよくあるミスと対策

最後に、個別機能訓練加算の算定で初心者がつまずきやすいミスを、現場の実例とともに3つ紹介します。

ミス①:計画書の説明・同意・交付の手続き漏れ

例えば、個別機能訓練計画書を作成したものの、利用者や家族への説明・同意・交付が抜けていたケースです。計画書は作成するだけでなく、本人や家族に説明して同意を得て、控えを渡すまでが一連の手続きです。
対策:計画書の様式に「作成日・説明日・同意日・交付日」のチェック欄を組み込み、記入漏れを防ぎましょう。

ミス②:計画の見直しを忘れたまま算定し続ける

「最初に計画書を作ったから大丈夫」と思い込み、定期的な見直しをせずに算定を続けてしまうミスです。見直しの記録がないと、後の実地指導で「要件を満たしていない」と判断され、加算の返還を求められることがあります。
対策:利用者ごとに次回の見直し予定日を一覧で管理し、カレンダーやリマインダーで通知する仕組みをつくりましょう。

ミス③:加算ⅡのLIFEデータ提出が期限に間に合わない

加算Ⅱはデータ提出が前提のため、LIFEへの提出が期限に間に合わず、その月の加算Ⅱが算定できなくなったという実例があります。提出が遅れた月は、加算Ⅱの分だけ収入が減ってしまいます。
対策:LIFEのデータ提出を月次の業務スケジュールに組み込み、請求データの伝送(毎月10日締切)とあわせて、提出状況を毎月チェックしましょう。

まとめ

個別機能訓練加算ⅠとⅡの違いは、「加算Ⅰ=機能訓練そのものを評価する日単位の加算」「加算Ⅱ=LIFEを活用した質の向上を評価する月単位の加算」と整理すると分かりやすくなります。加算Ⅱは加算Ⅰの算定が前提であり、両方を同時に算定することも可能です。

正しく算定するうえで欠かせないのは、個別機能訓練計画書を中心とした書類の整備と、計画の定期的な見直しです。今回紹介したチェックリストとよくあるミスを参考に、根拠書類をそろえながら、自信を持って加算を算定できるようにしていきましょう。

個別機能訓練加算は、利用者の自立支援につながるだけでなく、事業所の安定した運営を支える大切な収入源でもあります。要件を正しく理解し、根拠となる書類をきちんと残すことが、結果的に利用者と事業所の双方にとってプラスになります。なお、単位数や細かな算定要件は介護報酬改定で見直されるため、最新の情報を必ず確認してください。

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