認知症の家族との接し方|介護でつらいときの考え方

「同じことを何度も聞かれてつらい」「ついきつい言葉を返してしまった自分を責めてしまう」——認知症のご家族を介護していると、誰でも一度はぶつかる場面です。認知症の介護は、想像していた以上に、心がすり減ることがあります。けれど、その大変さを少しでも軽くするための「接し方の知恵」や「使える支え」は、たしかにあります。この記事では、認知症の方との接し方の基本、つらくなったときの考え方、そして頼れる相談先まで、認知症の家族に向き合う方に寄り添いながらお伝えします。

この記事の目次

認知症をまず理解する

接し方を考える前に、認知症の症状を少し知っておくと、本人の言動の受け止め方が変わってきます。

認知症の症状は、大きく「中核症状」「周辺症状(BPSD)」に分けられます。

  • 中核症状:脳の働きが低下することで直接起こる症状。記憶障害(さっきのことを忘れる)、見当識障害(時間や場所が分からなくなる)、判断力の低下など。
  • 周辺症状(BPSD):中核症状をきっかけに、不安・混乱・環境への反応として現れる症状。怒りっぽくなる、外に出ようとする、抑うつ、幻覚など。

ここで覚えておきたいのは、周辺症状は本人の「困りごと」の表れだということです。「困らせてやろう」と思っているわけではなく、本人自身が誰よりも戸惑い、不安を感じています。

認知症の方との接し方の基本

専門職が大切にしている、接し方のいくつかの基本があります。すべてを完璧にする必要はありません。「こういう視点もある」と知っておくだけで、関わり方は変わってきます。

否定せず、本人の世界を尊重する

「さっき言ったでしょう」「それは違うよ」と否定すると、本人の不安が強まります。事実と違っていても、本人にとっては本当のこと。まずは受けとめる姿勢が大切です。

急がせず、本人のペースで

考えたり、言葉を出したりするのに時間がかかるようになります。せかすと混乱が強まります。ゆっくり待つことが、安心につながります。

短く、はっきりと伝える

長い説明や、複数のことを一度に伝えるのは難しくなります。「〜しようね」と一つずつ、短い言葉で伝えると、伝わりやすくなります。

感情に寄り添う

本人が興奮したり泣いたりしているときは、「なぜそうなのか」を問いただすより、「不安だったね」「悲しかったね」と気持ちに寄り添うほうが、落ち着くことが多いです。

「困った行動」のときの考え方

同じことを何度も聞かれる、夜中に出ていこうとする、物がなくなったと家族を疑う——介護していると、対応に困る場面に必ず出会います。

そんなとき、心に置いておきたい視点があります。それは、「困った行動には、本人なりの理由がある」ということです。

例えば、「物がなくなった」と訴えるのは、自分の記憶がうまく働かないことへの不安の表れであることが多いものです。理由を理屈で説明しても解決しないことがほとんどです。むしろ、「一緒に探そうか」と気持ちに寄り添うほうが、本人も落ち着きやすくなります。

それでも、家族としては感情を抑えきれないこともあります。とっさにきつい言葉を返してしまった自分を責めてしまうこともあるでしょう。でも、それはあなたが頑張ってきた証でもあります。完璧な対応など、誰にもできません。

介護でつらくなったとき

認知症の介護は、終わりが見えない長丁場です。家族が自分自身を大切にする視点が、何より大切になります。

つらいと感じたら、次のことを思い出してください。

  • 完璧を目指さない:「ちゃんとしなきゃ」と思いすぎないこと。手を抜くのではなく、自分を守るための工夫です。
  • 少しの時間でも休む:介護から離れる時間を、罪悪感なく取りましょう。
  • 気持ちを言葉にする:つらさを誰かに話すだけで、心が少し軽くなることがあります。
  • 専門家を頼る:抱え込まないで、専門家に相談しましょう。

特に介護による疲れ(介護疲れ)を感じているときは、無理を続けず、相談先を持っておくことが大切です。詳しくは介護で家族が疲れたときの相談先と支援制度の記事もご覧ください。

なお、ご家族自身も高齢で介護されている場合は、いわゆる「老老介護」「認認介護」と呼ばれる状況にあたることがあります。気をつけたい点については老老介護とは何かの記事で紹介しています。

一人で抱えないために|頼れる場所

認知症の介護は、家族だけで抱え込まずに、専門家といっしょに進めることが大切です。

  • ケアマネジャー:介護サービスを調整する身近な相談相手。「最近こうした行動が増えた」と伝えれば、対応をいっしょに考えてくれます。ケアマネジャーの役割はケアマネジャーとは何かの記事もご覧ください。
  • 地域包括支援センター:介護全般の相談窓口。認知症の方やご家族の相談も受け付けています。
  • 認知症カフェ・家族会:同じ立場の家族と話せる場。「分かってもらえる」だけで気持ちが軽くなります。
  • かかりつけ医・もの忘れ外来:症状や薬について、医療面から相談できます。

「相談していい」と思える場所が一つでもあると、毎日の介護が少し違って見えてきます。

認知症の介護についてよくある質問

Q. 症状が進んで、家族のことが分からなくなったらどう接すればいいですか?
たとえ「あなたが誰か」が分からなくなっても、本人の感情は失われていません。やさしく接した気持ちは、安心感として伝わります。名前を呼んだり、笑顔で関わったりすることに、変わらず意味があります。

Q. 何度も同じことを聞かれて、つい怒ってしまいました。自己嫌悪に陥ります。
誰にでも起こることです。あなたが愛情を持って関わってきたからこそ、つらく感じるのです。「私はがんばっている」と、まずは自分を認めてあげてください。罪悪感を一人で抱え込まず、専門家に話してみることもおすすめです。

Q. 認知症の専門の医療機関は、どこで紹介してもらえますか?
かかりつけ医に相談するほか、地域包括支援センターでも紹介してもらえます。「もの忘れ外来」や「認知症疾患医療センター」が、認知症の専門医療機関にあたります。

Q. 仕事をしながら認知症の親を介護できるか不安です。
介護休業・介護休暇などの両立支援制度や、デイサービス・ショートステイなどのサービスを組み合わせることで、両立は可能です。一人で抱え込まず、早めにケアマネジャーに相談しましょう。

Q. デイサービスに通わせるのは、本人がかわいそうではないですか?
最初は戸惑うこともありますが、慣れると「ここで友達ができた」と楽しみにされる方も多いです。認知症の方に対応した施設もあります。ケアマネジャーに本人の状態を伝え、合う施設を探してもらいましょう。

まとめ

認知症の家族との接し方の基本は、「否定しない・急がせない・感情に寄り添う」です。「困った行動」には本人なりの理由があり、その不安に寄り添うことが、本人の落ち着きにつながります。

そして何より、介護するあなた自身を大切にしてください。完璧を求めず、つらいときは誰かに話し、専門家を頼る。それは弱さではなく、長く介護を続けるための知恵です。あなたの心が穏やかでいられることが、ご本人にとっても、いちばんの支えになります。

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