「親にはできるだけ元気でいてほしい。介護が必要になる前に、何かできることはないだろうか」——そう考えるご家族が、近年とても増えています。実は、要介護の状態になることを防いだり、遅らせたりするための「介護予防」という考え方があり、それを支えるしくみも整えられています。この記事では、介護予防とは何か、その基本となる視点、市区町村が行う「介護予防・日常生活支援総合事業」や地域包括支援センターの役割まで、これから介護に備えたい方に向けてやさしく解説します。
この記事の目次
介護予防とは?
介護予防とは、要介護の状態になることをできるだけ防ぎ、また、すでに支援や介護が必要な場合はその悪化をできるだけ防ぐ取り組みのことです。
「予防」というと病気の予防を思い浮かべますが、介護予防はもう少し広い考え方です。単に「弱らないようにする」だけでなく、生きがいや社会とのつながりを持ち、その人らしい生活を続けられるようにすることを目指します。
年齢を重ねれば、誰でも心身の機能は少しずつ変化します。大切なのは、その変化に早めに気づき、適切に手を打つことです。介護予防は「年をとっても、自分らしく暮らし続ける」ための前向きな取り組みなのです。
「フレイル」を知っておこう
介護予防を考えるうえで、ぜひ知っておきたいのが「フレイル」という言葉です。フレイルとは、健康な状態と、介護が必要な状態の「中間」にあたる、心身が少し弱ってきた状態を指します。
フレイルのサインには、次のようなものがあります。
- 以前より歩くのが遅くなった、疲れやすくなった
- 体重が知らないうちに減ってきた
- 外出の回数が減った
- 物事への意欲がわきにくくなった
フレイルの大切なポイントは、早めに気づいて手を打てば、健康な状態に戻れる可能性があるということです。だからこそ、介護予防はフレイルの段階での取り組みが重要になります。
介護予防で大切な3つの視点
介護予防は、特別なことをするわけではありません。日々の暮らしのなかの、次の3つの視点が基本になります。
体を動かす(運動機能の維持)
歩く、立つ、座るといった動作を保つために、適度に体を動かすことが大切です。激しい運動は必要ありません。散歩や、椅子に座ってできる体操など、無理なく続けられるもので十分です。「動かないことで、さらに動けなくなる」という悪循環を防ぐことが目的です。
しっかり食べる(栄養と口腔のケア)
高齢になると食が細くなり、低栄養になりやすくなります。低栄養は、筋力の低下や体調不良につながります。バランスよく食べること、そして口の中を清潔に保ち、噛む力・飲み込む力を維持することも、介護予防の大切な柱です。
人とつながる(社会参加)
意外に思われるかもしれませんが、人との交流や社会参加は、介護予防にとって非常に重要です。外出して人と話す機会が減り、家に閉じこもりがちになると、心身の機能は低下しやすくなります。趣味の集まりや地域の活動など、「出かける理由」を持つことが、元気を保つ支えになります。
介護予防・日常生活支援総合事業とは
介護予防を地域で支えるしくみが、市区町村が行う「介護予防・日常生活支援総合事業」(総合事業)です。
総合事業には、主に次のようなものがあります。
- 通所型サービス・訪問型サービス:要支援の認定を受けた方などが対象の、通いや訪問による介護予防のサービスです。
- 一般介護予防事業:体操教室や、住民が主体となって運営する「通いの場」など、高齢者が広く参加できる取り組みです。
総合事業のサービスは、要支援1・2の認定を受けた方のほか、市区町村の「基本チェックリスト」で対象と判断された方が利用できます。要介護認定や要支援については、要介護認定の申請方法を解説した記事もあわせてご覧ください。
地域包括支援センターの役割
介護予防の取り組みで、中心的な役割を担うのが地域包括支援センターです。地域包括支援センターは、高齢者の介護・福祉・健康に関する総合相談窓口で、各市区町村に設置されています。
地域包括支援センターでは、次のような支援を受けられます。
- 介護予防に関する相談
- 要支援と認定された方などの介護予防ケアマネジメント(介護予防のための計画づくり)
- 地域の「通いの場」や介護予防教室の紹介
「まだ介護は必要ないけれど、これからが少し心配」という段階でも相談できます。介護予防は、早く動き出すほど効果が期待できます。
今日から始められる介護予防
介護予防は、特別な制度を使わなくても、日々の暮らしのなかで始められます。
- 1日1回は外に出て、体を動かす
- 食事をしっかりとり、口の中を清潔に保つ
- 家族や友人、地域の人と、こまめに交流する
- 趣味や役割など、「楽しみ」「張り合い」を持つ
ご家族ができることもあります。離れて暮らす親に電話をかける、一緒に出かける機会をつくる——そうした関わりも、立派な介護予防です。デイサービスのように、外出と交流の機会になるサービスもあります。気になる方はデイサービスとは何かの記事や、介護保険で使えるサービス一覧の記事もご覧ください。
介護予防についてよくある質問
Q. 介護予防は、何歳から始めればいいですか?
「何歳から」という決まりはありません。早く始めるほど効果が期待できます。「最近、疲れやすくなった」「外出が減った」と感じたら、それが始めどきのサインです。
Q. 親が「自分はまだ元気」と取り合ってくれません。
「予防」という言葉を前面に出さず、「一緒に散歩しよう」「この体操教室、楽しそうだよ」と、楽しみとして誘うのがおすすめです。本人が前向きになれる入り口を、いっしょに探してみましょう。
Q. 介護予防のサービスを使うのに、お金はかかりますか?
総合事業のサービスには利用料がかかる場合がありますが、住民主体の「通いの場」など、無料または少額で参加できる取り組みもあります。費用は市区町村によって異なるため、地域包括支援センターに確認しましょう。
Q. 要支援と認定されたら、デイサービスは使えませんか?
要支援の方は、要介護向けのデイサービスではなく、総合事業の「通所型サービス」を利用するのが一般的です。内容は似ていますが、介護予防に重点が置かれています。
Q. 介護予防に取り組めば、要介護にならずにすみますか?
介護予防は、要介護になるリスクを下げ、その時期を遅らせることを目指す取り組みです。「絶対に要介護にならない」と保証するものではありませんが、健やかな期間を長く保つことに役立ちます。
まとめ
介護予防とは、要介護の状態をできるだけ防ぎ、遅らせ、また悪化を防ぐための前向きな取り組みです。健康と要介護の中間である「フレイル」の段階で早めに気づくことが、特に重要になります。
介護予防の基本は、「体を動かす」「しっかり食べる」「人とつながる」の3つの視点です。市区町村の総合事業や、地域包括支援センターといった支えも活用できます。「まだ大丈夫」と思える今こそ、介護予防を始めるとき。小さな取り組みの積み重ねが、ご本人とご家族の、これからの安心につながります。